絵本の花束

㊼いせひでこ 作・絵/『にいさん』/偕成社

ちょうど原田マハさんの『たゆたえども沈まず』を読み終えた頃に、思わず手に取ったこの一冊。
作者であるいせひでこさんも又、オランダ、ベルギー、フランス、、、とゴッホの足跡をたどる旅を続けてきたのでした。

ゴッホの弟、パリの画商であるテオの目線から捉えた、憧れの兄ゴッホの孤独と戦い続けた哀しくも激しい生涯。なんとしても兄の絵を世に出したいと、金銭面でも、精神面でもずっと支え続けたテオの兄への深い愛が、美しい絵とことばで読み手のこころに迫ってきます。

『兄の死後、彼がオランダの母に当てた手紙の中のことば「にいさんは、ぼくのすべて、ぼくだけのにいさんだったのです!」が、この絵本を制作するあいだ心をはなれることがなかった。』(あとがきより)

ゴッホの後を追うように亡くなったテオ。テオがいなければ、ゴッホの絵はこの世で日の目を見ることはなかったでしょう。
マハさんの作品と合わせて読んでみると、ゴッホとテオの生涯が浮き彫りにされて、ゴッホの作品に秘められた世界観が垣間見られると思います。
(2008年3月1日発行)

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㊻ベク・ヒナ 作/長谷川義史 訳/『ぼくは犬や』/ブロンズ新社

ひとはぼくを「グスリ」とよぶんや。
と、なぜか長谷川さんの訳は関西弁!グスリ目線で、リズムよく軽快にお話は進んでいきます。

ぼくが、おとうちゃん、おばあちゃん、ドンドンの家族の元にやってきた時からのお話。ぼくのお母ちゃんはこの辺りのボスだから、近所にはたくさんのきょうだいがおって、ぼくは毎日元気よくみんなと楽しくやってるんや!

ぼくの仕事はドンドンのお世話をすること、、、だと思っている。なのに、あろうことか、ドンドンのベッドにそそうをしてしまったんや(・・;)
おとうちゃんにお仕置きとしてベランダに出されてしまったぼく。。。小さな小さな声でないてみた。そこにやってきたのは・・・

最後のページがあまりにも微笑ましくて、キュンとしてしまいます♡
我が家のワンコをムギュっとしたくなる瞬間でしたU^ェ^U

大切な小さな家族を亡くされ、かなしみの中におられる方に是非手に取っていただき、こんな素敵な日々があったことを思い出していただきたい、、、と思う一冊です。
(2020年04月16日発行)

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㊺ミカエル・エスコフィエ 文/クリス・ディ・ジャコモ 絵/ヨシタケシンスケ 訳/『もくもくをつかまえた』/クレヨンハウス

ヨシタケシンスケさん初の翻訳絵本です。

もりのなかで
もくもくした くもみたいなものが
きに ひっかっていたら
どうする?
もし、それを つかまえたら・・・・・・?
(表紙カバー裏表紙より)

もりのなかで見つけた「もくもく」は、なかなか思い通りにいきません。。。
どんなに大事にしようと思ってもスルッと逃げてしまうから、
どこにも行けないように閉じ込めたくなっちゃう・・・
でも、そうしてみたら、泣いて泣いて雨がザーザー☔

その都度、ビックリやガッカリやムカムカ気分になっちゃう。
見つけなきゃよかった、、、なんてことも思っちゃう。

「もくもく」は友だち?それとも恋人?
確かに人間関係は自分の思い通りにはいかないし、
なかなか厄介(ー_ー)!!

読み手によって、「もくもく」はなんにでもなれます。
最後のページのモヤモヤに対する答えがまるで「ヨシタケ節」なことが、とっても不思議。

『「最初に読んだ時、え、どういうこと?」って思ったので、
いっしょにそう思っていただけたらうれしいです。』ヨシタケシンスケ
(クレヨンハウスHPより)

「もくもく」と仲良くなりたくてしかたのない、主人公の男の子とワンコ。
その表情や仕草があまりにも愛らしくて、自然とこちらまで笑顔になってしまいます(*^^*)

そんな素敵なフランス生まれの絵本です🗼
(2019年3月5日発行)

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㊹ヨシタケシンスケ 文・絵/『にげて さがして』/赤ちゃんとママ社

あなたのその2本のあしは、歩いたり走ったりするためだけについてるわけではないんだよ、とヨシタケさん。

世の中にはいろんな人がいて、中には相手の気持ちをおもんばかることができない人もいて・・・そんな人に嫌な思いをさせられたり、傷つけられたりしたら、とにかくその場から離れて、にげて!!

世の中「逃げちゃだめ」な時もあるけれど、「逃げなきゃダメ」なこともある。そのためにそのあしはついてるんだよ。

そしてもうひとつ。世の中には優しい人もいるということ。自分を護りわかってくれる人は必ずいるから、あきらめずにさがそうよ!そのためにも、そのあしはついてるんだよ!!とヨシタケさん。。。

にげることやさがすことをやめてしまうと、二度と大切な人に出逢うことはできないから、その自分のあしを動かしてさがし続けよう!
そして、動かすか動かさないか、探すか探さないかは、あなた自身が決めることなんだよ、とも。
さぁ、あしの「有効活用」始めましょう👣👣👣
(2021年3月16日発行)

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㊸ヨシタケシンスケ 文・絵/『あんなにあんなに』/ポプラ社

久しぶりのヨシタケさん。

世の中、諸行無常とはよく言ったものです。
「あんなに」だったことが「もう こんな」になっちゃうのですから。
「あんなに」小さくて可愛かった息子が、「もう こんなに」大きくなっちゃって・・・
日常生活の中に溢れる「あんなに」と「こんなに」を繰り返しながら、人はよくもそうでなくも、成長し変化していくのだと思います。

自分の子ども時代、或いは我が娘・息子の過ぎし日を懐かしみながら、胸がじんわりとあつくなるヨシタケワールド、体験してみませんか?
「あんなに」があるから「こんなに」があって、「こんなに」があるからこそ「あんなに」に思いを馳せることができる、ということに気づかせてもらえるかもしれませんよ!
(2021年6月15日発行)

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㊷岡田淳 文/植田真 絵/『チョコレートのおみやげ』/BL出版


「時間がとけていくみたい」

ある休日、おばさんと一緒に神戸デートコースを散策しながら、楽しいひとときを過ごしたわたし。
港の公園で、坂の途中で買ったチョコレートをひとつずつ口の中で溶かしながら、ファンタジーの世界へと・・・
おばさんが話してくれたのは、風船売りの男とニワトリとのとっても優しいお話。でも、チョコレートを食べながらゆっくりと進められていく物語の結末は、ちょっとほろ苦いものだったのです。

結末に納得のいかないわたしは、いいことを思いついたんです。
甘くとろけるようなチョコレートには、きっと時間をも溶かしてしまう魔法が宿っているに違いないと・・・

優しい結末に胸をなでおろしながら、なぜかほろっとさせられてしまいました。懐かしい神戸弁で語られる会話の柔らかさ、そして、絵画のように美しい挿絵が、読み手のこころをも溶かしてしまったのかもしれません。

是非、お気に入りのチョコレートを頬張りながら、ゆっくりと流れる時間をお楽しみください。
(2021年6月1日発行)

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㊶ノーマン・ブリッドウェル文/椎名かおる 訳/『クリフォード おおきな おおきな あかい いぬ』/あすなろ書房

1963年の初版以来ロングセラーとなっている絵本で、作者ノーマン・ブリッドウェルのデビュー作です。絵本の中のクリフォードの飼い主エミリー・エリザベスは、作者の愛娘の名前だそうですよ。

家よりも大きい?クリフォードは、なにかと「困ったちゃん」なことをしでかしてしまいます。それでもエミリー・エリザベスは、どんなクリフォードもだ〜〜い好き♡.。.:*♡

相手がワンコでもそうでなくても、誰かを大切にするということは、どんなあなたであっても大丈夫だよ!と受け容れて愛し続けていくってことなんだよ、とエミリーが教えてくれています。
とにかく、クリフォードが可愛くて仕方がないと言わんばかりのエミリーの表情と、困ったり、怒ったり、頑張ったり、エミリー大好き、、、の様々な表情を見せてくれるクリフォードが最高です✨

いつかお別れの日がきた時、たくさんたくさん愛していれば愛しているほど、かなしみは大きな渦となって襲ってくるかもしれません。でも、たくさん愛し合った、たくさんの想い出がきっと、かなしみの淵から立ち上がることのできる力を与えてくれるに違いない、、、とも思うのです。
・・・と私自身にも言い聞かせながら。。。
(2021年04月30日発行)

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㊵たかどのほうこ 文・絵/『わたし、パリにいったの』/のら書店

たかどのほうこさんのこころ温まる優しい絵本。こちらは、文と絵の両方を手掛けておられます。

はなちゃんとめめちゃんは仲良し姉妹。家族でパリに行った時のアルバムを見るのがだ〜〜いすき(*˘︶˘*).。.:*♡
でもこの時、めめちゃんはまだママのお腹の中。
はなおねえちゃんが何度も何度も聴かせてくれるお話を覚えちゃったのかと思いきや・・・

ページを捲るたびについ微笑んでしまう、パステル画のような可愛らしい絵の数々。きっとパリってこんな優しい風が吹いているんだろうなぁ、と思わず深呼吸してしまいます。

嘘のようなホントの話?それとも、ホントのような嘘の話??
ふたりが織りなす物語を読み進めていくと、きっと本当なんだろうなぁと思わせてくれるふたりのはち切れんばかりの笑顔に、どんどん引き込まれていきますよ!!(第59回野間児童文芸賞 受賞)
(2021年3月22日発行)

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㊴たかどのほうこ 文/網中いづる 絵/『コロキパラン』/のら書店

コロキパラン♪♪♪♪♪♪♪キロラポン♫♫♫♫♫♫♫
コロキパラン♪♪♪♪♪♪♪キロラポン♫♫♫♫♫♫♫
春を待つ公園にはきれいなオルゴールの音色が舞い踊っていて、まるで魔法がかかったような不思議なできごとが起こります。

バレンタインのチョコを売るアルバイトを引き受けた私。チョコを買ってくれたお客様に似顔絵のプレゼントをする「似顔絵描き」のアルバイトです。
似顔絵なんて描いたことがないのに、なぜかオルゴールの音色を聴いていると、お客様を笑顔にしちゃう魔法のような絵が描けてしまうのでした。

そして、次々と小さくて可愛らしいお客様が・・・
大自然の中では、信じられないような出来事がアッチでもコッチでも起きているのです。

リズミカルな文と色彩豊かでウキウキしてくるような絵がマッチして、きっと本当にこんなことが起きてるんだろうなぁ、と思えてきて、自然とニッコリ、ふふっとなってしまう一冊です。
(2022年01月28日発行)

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㊳葉祥明 絵・訳/(作者不詳)/『ジェイクから10のおねがい』/戎光祥出版

すべての犬が幸せでありますように・・・・・・。
人間の言葉が話せない犬たちに代わって、
ジェイクが犬たちの気持ち
”10 Commandments of Dog Ownership(犬の十戒)”
を伝えてくれます。

ワンコ🐾に限らず、ある日やって来た大切な小さな家族。
どんなに愛していても、いつかお別れの日がきます。
その時にいいお別れができますように、深いペットロスに襲われませんように、、、と祈るような気持ちで過ごす日々。
起こり得る予期悲嘆から目をそらさないこともまた、大切なグリーフワークのひとつなのです。

その時のことを想像するだけでも胸が苦しくなってしまいますが、
でも、どうしたら可愛い彼らが安心して深い眠りにつけるのか、のヒントとなり得る十戒が、葉祥明さん独特の優しいタッチの絵の世界で丁寧に描かれています。
きっと、いいお別れに近づけると信じて。。。

(帯紙より)
ある日あなたの所にやって来て、
いつかあなたのもとを去っていく、
小さな命との愛を築くための大切な誓い。
葉祥明
(2018年1月10日発行)

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㊲アイリーニ・サヴィデス文/オーウェン・スワン 絵/きくたようこ 訳/『もういいかい?』/バベルプレス

じぃじぃとかくれんぼするとき、じぃじぃはわざとまけてくれる。
でもこんどだけは、どうしてもじぃじぃを見つけることができない。じぃじぃがいなくなっちゃった。「もういいかい?」といくら叫んでも「もういいよ!」という返事は返ってこない。

じぃじぃのコートを着てみても、じぃじぃのマフラーを巻いてみても、じぃじぃとそっくりなボクがいるだけで、じぃじぃはやっぱり見つからない。

よなかにそっとベッドから抜け出して、もういちどだけ「もう い い か い?」と、いっしょうのお願いをしてみると・・・

子どもごころに大好きな人の死を受け止めていく様子が、優しい絵とともに描かれています。ボクがどれほどじぃじぃのことが大好きだったか、、、胸が熱くなります。(2013年2月20日発行)

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㊱なかがわちひろ 文・絵/『すてきなひとりぼっち』/のら書店

一平くんは、絵を描くのが大好きな男の子。夢中で絵を描いているから、教室ではどうしても「ひとりぼっち」になりがち・・・でも、こんなひとりぼっちにはなれている。

雨が降る日の学校帰り。転んで傘がこわれて、膝をすりむいて・・・こんなひとりぼっちにも慣れているけど、家に帰ったらお母さんが鍵をかけたままいなくなっちゃってた。さすがにこれは、さぁ大変!!

ひとりでお母さんの行きそうな商店街に行ってみたけど、お母さんはなかなか見つからない。知らない人ばかりの中で、でも楽しい出会い、美味しい出会い、ありがとうの出会いがたくさんあって・・・

なんだか眠れないある夜、一平くんがふと見つけた素敵な時間。自分だけのとっておきの大切な時間。さて、、、、彼はいったいどんな時間を見つけたのでしょうか?「こんなひとりぼっちは素敵だな✨」「ひとりぼっちも悪くない」という彼の小さな発見は、「ひとりぼっち」を恥ずかしいとか辛いとか寂しいとか思っている誰かのこころを、優しく包んでくれることでしょう。

(著者メッセージ)
じつは、だれでもみんな、ひとりぼっちです。
そしてひとりぼっちのときに、宝物をたくさんみつけます。
ほんとうですよ。あなたもたしかめてみてください。
なかがわちひろ
(2021年4月30日発行)

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林木林 文/庄野ナホコ 絵/『せかいいちのいちご』/小さい書房

『二番目の悪者』に続き、林木林さんと庄野ナホコさんのコンビによる絵本です。

「ふえると へる 増えると 減る」まるでなぞなぞのような副題がついています。

たった一粒のいちご。
大切に大切にすぐには食べたりしないで、匂いを嗅いだり、ただ眺めるだけだったり・・・

それが毎年少しずつ数が増えていくと???
いちごの数はふえるけれども、不思議不思議、なにかがへっていくのです。

最初は特別な存在であったものが、当たり前になってしまうとどうなっていくのでしょうか。
コロナの時代に嫌というほど思い知らされた私たち。忘れがちな大切なものについて考えさせられる一冊です。
(2018年6月28日発行)

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㉞林木林 文/庄野ナホコ 絵/『二番目の悪者』/小さい書房

いつも、キャンドルワークショップの最後に朗読している『あかり』の作者である林木林さんの作品です。

いつも朗読しているのはこころがほんわかとあたたかくなる内容なのに、この作品は、最後のページを捲った瞬間「怖〜〜〜」と思わず口走ってしまうものでした。

金色のたてがみをなびかせ、自分は1番素晴らしい存在だと疑わない金のライオン。
そして、こころ優しく自分の身なりなどには無頓着な銀のライオン。

この2頭のライオンを巡る、他の動物たちの諸言動。。。

真実を知っているのは、空に浮かぶ雲☁だけ・・・
でも、雲の言葉は誰にも届きませんでした。

情報過多の現代。
何が真実なのかをどう見極めていけばよいのか、、、その問いかけに私たちは真摯に耳を傾けているでしょうか。
ちょっと背中がゾワゾワっとするけれども、でもとても大切なことを問いかけてくれています。(「図書館員がえらぶ選書センター大賞2022」大賞受賞)
(2014年11月26日発行)

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㉝中村妙子 訳/東逸子 絵/『サンタクロースっているんでしょうか? 子どもの質問に こたえて』/偕成社

「ねぇ、サンタさんって本当にいるの?」と子どもに尋ねられたら、なんと答えますか?

1897年9月21日のニューヨーク・サン新聞社に、バージニアという名の8歳の少女から一通の手紙が届きました。それがこの質問だったのです。

そして、フランシス=P=チャーチという記者が、その少女に答えるために社説を書いたのです。

この世界でいちばんたしかなこと、それは・・・

やがて成長したバージニアは教職につき、最後は長期に渡って入院生活を送っている子どもたちのための学校の副校長を勤め上げたといいます。

1971年に81歳で亡くなった時、ニューヨーク・タイムズは『サンタのバージニア』という見出しで、「アメリカのジャーナリズムにおいて、もっとも有名な社説が書かれるきっかけとなった、かつての少女」という一文を捧げ、その死を悼んだと言われています。

語りかけるような、その心温まるこたえは、子どもだけではなく我々大人にとっても、きっと素敵なクリスマスプレゼントになると思います🎄
わかりやすい訳に美しい絵が添えられていて、やっぱりサンタさんって・・・と笑顔になれる一冊です✨

自分だったらなんて答えるかな、、、なんて思いながら、どうぞそのこたえを覗いてみてください。
(1977年12月5日発行)

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㉜M.B.ゴフスタイン 文・絵/谷川俊太郎 訳/『おばあちゃんのはこぶね』/現代企画室

おばあちゃんがまだ子どもだった時に、お父さんが木で作ってくれた箱舟とそこに入れてくれた動物たちを大切にしているものがたり。
旧約聖書の「ノアの箱舟」のテーマを借りて、歳をとった人もずっと前は子どもだったことをユーモラスに伝えています。
お父さんが作ってくれた箱舟には大切な思い出がいっぱい詰まっていて、いつもこころをあたためてくれるのです。

「ながさは三百キュービット」お父さんの元気な声が聞こえてきます。
ノアとその奥さん、ヒョウにヒツジ、ウマとハト。わたしが大きくなるにつれ、クマとウシにメンドリとオンドリ、そしてトラ。お父さんはどんどん作ってくれました。

 

歳月は流れ、みんないなくなってしまった。

 

よろこびとかなしみが虹のように重なり合っている。

 

 

 

 

 

 

そしてたくさんの思い出が、わたしのこころをあったかくしてくれる。
それはまるでおひさまのよう!!

 

<ゴフスタイン最期のことば>
私も創られたもので、
私もまた色々なモノを創った。
私たちみんなの存在が、
真実を顕にする。
(ああ、私はなんて素晴らしい時を生きているのか。)
あなたがなすべき仕事がまだ、
残されている。
ねぇ、よく聞いてーーーーー
私たちはそんな物語を紡いでいくのよ。
2017年11月〜12月、コネティカット州ダンベリーにて、地域ホスピスでの訪問者との会話から抜粋
翻訳:安永麻里絵

私たちはそれぞれ才を授かっていて、それをどう使うかは私たちの自由!だから、ひとりひとり、誰もが特別な才能を与えられた存在だと理解することがとても大切。

さぁ、あなたはどんな物語を紡いでいきますか。。。
(2018年6月15日発行)

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㉛升井純子 文/小寺卓矢 写真/『さくららら』/アリス館

北海道北部の小さな町、幌加内は国内で最も寒い気温マイナス41.2度を記録した豪雪地帯です。このものがたりは、幌加内のチシマザクラ「さくらちゃん」のモノローグです。絵ではなく、写真と文が素敵にマッチした珍しい写真絵本です。

 

ここは北海道。4月です。

 

日本一遅く咲くチシマザクラのさくらちゃん。
どんなに雪が積もっていても、ちゃんとここにいます。

 

 

 

ようやく雪解けのようです。

あ〜、重かった。。。

 

5月になって、ようやく春がやってきました。
『ぽかぽか じんじん』
周りのお友だちは、
次々と花を咲かせています。

 

 

周りのみんなに温かく見守られて
ついにさくらちゃんも・・・

 

 

7年の歳月をかけて撮影されたさくらちゃん
そんなさくらちゃんのひとりごと。。。
わたしがさく日は わたしがきめる
おそくたって これがわたし
ちいさくたって これがわたし

 

本州で桜の便りの聞かれる今日この頃、さくらちゃんはまだまだ雪の中。
ちょっと不安はあるけれど、ゆっくりゆっくり準備して、5月の終わり頃に花を咲かせます。どんなに遅くたって、どんなに小さくたって、これがわたし。自分を肯定して、自分らしく精一杯花を咲かせるなんて、なんて素敵なんでしょう(*˘︶˘*).。.:*
やっと、とか、ようやく、とか、、、誰かの価値観なんてどうでもいいの!だって、わたしがさく日は、わたしが自分で決めるんだもん!!

そんなさくらちゃんの素敵なものがたり。
まだまだ雪の中で、その重さにじっとたえているさくらちゃんが、今年も見事な花を咲かせる日をゆっくりと待ちながら読んでみてはいかがでしょうか🌸
(2021年3月25日発行)

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㉚もくもくちゃん 文・絵/『がんばりすぎたきみ。きょうは、うんと休みすぎようね。』/大和書房

癒しや優しさをテーマに活動している、イラストレーター「もくもくちゃん」による、こころあたたまるエッセーのような絵本のような可愛らしい本です。ほっこりと目にも優しいイラストがたくさん散りばめられています。

がんばりすぎていても気づかないことがある。
まだまだ自分は、がんばっていないよ、とまで思うこともある。
大丈夫? と聞かれても、すぐに大丈夫、と返す。
そうやってがんばるあなた。きょうもよーくがんばっているね。
がんばるってなんだろう。
そう思うと分からなくなるけど、
朝起きてねむたいのに一生懸命目を開けるでしょう。
もうそれだけでがんばっているよね。
<「はじめに」より>

 

イライラな私を許す。
こういう日もあるよね。と。
いいんだよ、笑えるときに笑えば。

 

 

 

誰だってひとり。誰だってひとりじゃない。

 

 

 

あなたの人生、あなたが主役。
やりたいように突き進め!

伝えるべき「今」は、いつまでも待ってはくれない。

「ひとつしかない」という価値。
「今だけ」という価値。
この世でたったひとりのあなたの
一生のうちの今を
私はいま、いただいています。

 

『かなしみとともに生きる』ための道標になるようなメッセージ満載です!!

もくもくちゃんの「大丈夫になりますように」の思いとともに。。。
(2020年9月5日発行)

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㉙ピーター・コリントン 文・絵/江國香織訳(解説)/『天使のクリスマス』/ほるぷ出版

もし、えんとつがなかったら、どこからサンタクロースは入るのでしょう?
その答えを、ピーター・コリントンがそっと教えてくれている絵本です。

クリスマスの夜、守護天使たちは大忙し。
この守護天使とは、特定の誰かをマンツーマンで護る個人的天使のことです。(解説より)
願いごとを確認したり、お家の鍵をそっと開けておいたり・・・
  さぁ、準備万端です!

サンタクロースが迷わないように滑走路も!!

そこをめがけて、サンタさん登場です🎅

 

 

 

見つからないようにそっとそっと・・・

 

お仕事を無事終えて、サンタさんはソリに戻ります。
守護天使たちも、ちゃんと鍵をかけてお仕事完了です🎄

<解説より抜粋>
雪の日は、いつもびっくりするほどしずかです。雪があらゆる音をすいとって、地上を白い静謐でみたします。私は、こんなしずかな絵本に言葉をそえることに、ちょっとうしろめたさを感じながらこれを書いています。

この絵本は140もの絵で構成されていて、文字がない分だけ余計に鮮明に、気配や音まで伝えてくれます。ピーター・コリントンの丹念な絵は、どれもリアルで慎み深く、ゆっくり眺めているうちに、五感全部でまるごとクリスマスイブを感じてしまいます。

煙突のあるなしにかかわらず、しずかで美しい、それぞれのクリスマスです。(江國香織)

言葉はなくとも、言葉以上のものがたりが五感を通して伝わってくる、そんな不思議な絵本です。
最後の3枚の絵が本当に可愛らしくて、思わずにっこりしてしまうラストです。
こんなしずかなクリスマスも素敵です✨
(1990年11月20日発行)

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㉘レベッカ・ハリー 文・絵/木原悦子訳/
新版 『ゆきうさぎのねがいごと』/世界文化社


ゆきうさぎのピートくんは、森の中で一人暮らし。ピートくんは、サンタさんに一つだけ願いごとがあります。

サンタさんにその願いごとを伝えたくて、北極星の方角にあるサンタさんのお家を目指してお出かけです!

途中、クマくんやキツネくんなど、森の動物たちと出会います。困っている彼らに、こころ優しいピートくんは、自分のために持ってきた大切なものを次々と手渡していくのでした。
このピートくんの優しさが、最後にはピートくんの願いごとを叶えてくれることになるのです✨
さて、ピートくんの願いごととは???
冷たく寒い森の中の、こころ温まる優しい優しいものがたりです。

キラキラした箔押しが全ページに施されていて、冷たい雪や氷の煌めき、星の輝き、そして嬉しくてたまらないワクワクとした気持ちが伝わってきます。
そしてなによりも、森の動物たちの表情が本当に可愛らしくて、思わず「可愛い!」と声に出してしまうほどです。
クリスマスを迎えるこの時期、ほのぼのと温かい気持ちにしてくれる1冊です。
(2014年11月5日発行)

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㉗正岡慧子 文/松永禎郎 絵/『きつねの たなばたさま』/世界文化社

こぎつねのおかあさんは、ある日猟師に撃たれて
天に召されてしまいました。

こぎつねは、突然いなくなったおかあさんをずっと待ち続けています。

ある日こぎつねは、人間の子どもが、願い事を書いた短冊を、笹の葉に結びつけているのをじっと見つめていました。

「これがおねがいだな」こぎつねはいそいで山に帰っていきました。

 

「おかあさんにあいたい」というお願いを書きたくても、こぎつねには字が書けません。

それでも、見つけた葉っぱに、一生懸命にねがいごとをしました。

 

 

そして、葉っぱをそっと笹の葉に結びつけました。

 

どうやったらおかあさんに会いたいという夢が叶うのか、一生懸命に考えるこぎつねの姿に思わず涙がこぼれそうになります。

さて、こぎつねのねがいごとは叶うのでしょうか。。。

親子の絆や、かなしみを抱きながらも成長するこぎつねの姿に、気持ちがほんわかと温かくなるものがたりです。
(2003年6月1日発行)

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㉖ジェイコブズのイギリス昔話集より/瀬田貞二 訳/瀬川康男 絵/
『ちっちゃなちっちゃなものがたり』/福音館

 

 

 

掌に乗るような、ホントにちっちゃな絵本です

写真を撮るのも大変なくらいちっちゃな絵本です

【出版社より】
ちっちゃなちっちゃな村の ちっちゃなちっちゃな家に
すんでいる ちっちゃなちっちゃなおばさんの身に起きた
ちょっぴり怖いお話の ちっちゃな美しいえほんです

でも〜〜〜
ちっちゃくって可愛らしいから、ついごまかされそうになるけれど、
よくよく考えたら、とっても怖いお話なんです。。。
もしも普通サイズの絵本だったら、結構怖いかも(・・;)

さて、なにが起こるかは、掌に乗せてからのお楽しみ!!
(2017年1月15日発行)

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㉕ヨシタケシンスケ 文・絵/『もしものせかい』/赤ちゃんとママ社

ある日のこと・・・
   
目覚めると、大切なものがなくなっていた。
どうして君なの? どうして今なの?

きみが どうしても
できなかったことや、
ずっといっしょにいたかったひとや
かわってほしくなかったもの。

きみのめのまえからきえてしまって、
「もしも あのとき・・・」って
おもいだすもの。

それは、みんな もしものせかいに
いるんだ。

いつものせかいと もしものせかい

「もしものせかい」って、いったいどんなところなのでしょう。。。

自分にとってとても大切なものや、思ってもいなかったお別れ。
突然こころにポッカリ空いてしまった穴。。。

その穴は、どうやったらうめることができるのでしょう。。。

 

そのヒントを、いつものように優しく易しく

シンスケ流に、コッソリ教えてくれています。

 

「もしもあのとき・・・」の呪縛から、解放されるかもしれませんよ。
(2020年2月発行)

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㉔荒井良二 文・絵/『きょうというひ』/BL出版

 

「きのうの よる ゆきが ふりました

しずかに しずかに ふりました」

 

 

 

「あさひが ゆきを てらして

きょうというひの はじまりです」

 

 

「ロウソクに ひを ともします

しずかに あかるく

きょうというひを てらします」

 

 

少女は ちいさなかまくらをたくさんつくって

ロウソクを ともします

「きえないように きえないように」

と いのりながら・・・

 

ロウソクの燈火はみんなのいのち、、、なのかもしれません。
そのいのちが、きえないように、きえないように、いのるようなきもちで、日々のなにげない、あたりまえのことを、たいせつにして生きていく。

ひとりひとりがそう思いながら、自分のことも周りの人のことも
大切に思って生きていく。

特に今、あたりまえがあたりまえでなくなってしまった今、こころに刻みたい、しずかだけれども、あつい思いです。
(2005年12月発行)

 

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㉓いもとようこ 文・絵/『まいにちがプレゼント』/金の星社

あたらしい あさです。

毎日が、新しい今日です。

 

 


しろいくもが うかんでいます。

きのうは きのうのくも。

そして 今日は 今日のくも。

おなじくもではありません。

 


かぜが ふいています。

かぜも また

あたらしい かぜです。

 


毎日 あたらしい 今日が やってきます。
かこのことを くやんだり
みらいのことを しんぱいしてみても
いまは どんどん すぎさって
かこになってゆくのです。
そして みらいのことは だれにも わかりません。

 


いま このとき は いまの この一瞬だけ。

そして まいあさ あたらしい きょうが

やってくるのです。


英語では、「いま」のことを 「Present」というそうです。
毎朝、新しい今日がやってきて、きのうの自分とは違う自分がいるのです。
それは、止まることなく流れている時間のおかげ・・・

 

わたしたちは、毎日、毎朝、「今日」という素敵な時間をプレゼントされているのかもしれませんね。
なんといっても、ページをめくるたび、いもとさんらしい、愛らしいハリネズミくんに、こころが和んでいきますよ(*˘︶˘*).。.:*♡
(2018年9月発行)

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㉒筒井大介編/『あの日からの或る日の絵とことば』/
3.11と子どもの本の作家たち/創元社

 

 

 

現代を代表する絵本作家たちの、ごくごく個人的な、あの日にまつわる、ある日の物語が描かれています。

 

総勢32名の絵本作家によるものですが、その中から、ここで今までにご紹介したお二人の作家の方の作品をご紹介いたします。


荒井良二さん

「いつも旅をしているようで
でもそこはいつもの街で」
いつも旅をしている。いつも旅をしている、ように思う。
ときどき、ほんとに旅に出るが、でも、そこはいつもの街で。

いつものぼくの街で。思う存分、遠く————————

ヨシタケシンスケさん

「あの年の5月ごろ」
今思えば、当時の私は「理不尽に訪れる運命」について、何かのイメージを探していたのだと思う。
「ああ、そうか」
と思った。私も息子も、何かの手の上にのっているのだ。

「あの日からのワタシ」
私は、こわがりなのだ。

思い出しすぎてもいけないし、忘れすぎてもいけない。

新しい形の希望が必要なのだと思う。

その可能性を否定できないことこそが現時点での希望のかわりなのだ。

編者/筒井大介「まえがき」より
『あの日にまつわる、個人的な、他人にとっては些細な物語。そんな物語を沢山聞いてみたい。

どこからでも、この本を開けば、誰かのそんな瞬間の物語に出会う事ができる。そしてそれを、心強く思う日があるかも知れない。
あの日からの絵と言葉の物語は、僕やあなたと同じ日々を歩んでいるはずだ。』

32人32様のあの日の物語。手にとってみて、今度は、あなた自身のあの日の物語を紡いでみてください。
(2019年3月10日発行)

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㉑フェリクス・ホフマン 文・絵/しょうのこうきち 訳/
『クリスマスのものがたり』/福音館書店

<ルカによる福音書>
天使ガブリエルがマリヤにあゆみより、こう言いました。
「おめでとう、マリヤよ。私は神の言葉をつたえにきた。あなたは、おとこの子をうむだろう。その子を、イエスとなづけよ。その子は、大いなるものとなり、やがては、ひとびとの救い主となるだろう」

だいくのヨセフは、ベツレヘムのうまれでした。そこでヨセフは、皇帝のめいれいにしたがって、つまのマリヤをつれ、ベツレヘムをめざして、ながいたびにでました。

そのよる、マリヤは、おとこの子をうみました。マリヤは、その子をぬのにくるみ、かいばおけのなかに、ねかせました。

とつぜん、ひとりの天使が、ひつじかいたちにあゆみよりました。「こんばん、ひとびとの救い主が、おうまれになったのだ。うたがうのならば、ベツレヘムにいくがよい。あなたがたはそこで、うまれたばかりのおさなごが、かいばおけの中に、ねているのをみつけるだろう」

「いとたかきところでは、神に栄光があるように。地のうえでは、みこころにかなうひとびとに、平和があるように」

とても素朴で優しいタッチの絵が、喜びに満ちたクリスマスの物語を包み込むような絵本です。どうぞ、心静かにクリスマスをお迎えください🎄
(1975年10月10日発行)

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⑳荒井良二 文・絵/『あさになったので まどをあけますよ』/偕成社

第5回
MOE絵本屋さん大賞

 

あさになったので まどをあけますよ

やまはやっぱり そこにいて
きは やっぱり ここにいる
だから ぼくは ここがすき

 

こどもたちが まどをあけています。

 

 

 

山にも都会にも海にも川にも空にも、あさはやってきます。
あるべきところに、あるべきものがあることの幸せ。
朝、カーテンを開けるたび、当たり前の日常が始まることに「あー、今日も生きてるんだな〜」という喜びがわいてきます。それは、今日もまた1日を生きていく自分に、希望と勇気をあたえてくれるのです。

前回ご紹介した『きょうは そらに まるい つき』と、まるで対を成しているかのようなこの絵本は、作者の荒井良二さんが、東日本大震災後に描かれた絵本だそうです。
震災後に現地を訪れ、現地の人々と接する中で、日常生活を取り戻す第一歩として絵本作家としてできることは、「朝、起きたらカーテンをあける」ことだと感じられたことから、この絵本が生まれたそうです。

あるべきところに、あるべきものがなくなってしまった非日常を経験したからこそ、日常のなにげないできごとの繰り返しこそが、本当の幸せなのではないだろうか・・・と気づかせてくれたのかもしれません。

きょうは だいすきな きのしたが わたしのへや
いつも かぜが ふいていて
やっぱり わたしは ここがすき

きみのまちは はれてるかな?
(2011年12月発行)

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⑲荒井良二 文・絵/『きょうは そらに まるいつき』/偕成社

第22回
日本絵本賞大賞受賞

夕暮れの公園で、ベビーカーの中からあかちゃんが、空を見ています。
「きょうは そらに まるいつき」

 

 

 

バレエの練習帰りの女の子や、新しい靴を買ってもらった少年が、バスの中から空を見ています。
「きょうは そらに まるいつき」

山や森の動物たちや海のくじらに、
あかちゃんから、おじいちゃん、おばあちゃんまで・・・
みんなが見上げる空には、まあるい月が輝いていて、
あったかい色のひかりがふってきます。
「きょうは そらに まるいつき」

場所も歳もいのちのありかたも全然違うけれども、
時間も空間も飛び越えて、きょうのまるいつきは、
そのみんなを繋いでいるのです。

なにげない毎日の暮らしの中で、
空を見上げ、月を眺める。
誰の目にも降り注ぐ、まるいつきの温かなひかりが
そのなにげない日々を愛おしみ、明日もまた頑張ろう!と語りかけ、
生きていることの喜びや希望でこころを満たしてくれるのではないでしょうか…

 

 

あかちゃんが空を見て笑っています。
なにが見えているのでしょうか?
なにを感じているのでしょうか?

 

満月を見上げた時の「おぉ〜〜〜〜っ」という瞬間を、ギュッととじこめたような、優しい1冊です。(2016年9月発行)

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⑱ヨシタケシンスケ 文・絵/『このあとどうしちゃおう』/ブロンズ新社

おじいちゃんがしんでしまった。

そして、おじいちゃんのベッドの下から、おじいちゃんがかいた
「このあと どうしちゃおう」ノートがでてきた。

 

そこにかかれていたのは、、、

 などなど・・・

おじいちゃんのノートを読んでると、なんだか「しぬ」のって楽しそう。。。

いや、ひょっとしたらその逆かもしれない。

おじいちゃんは「しぬ」のがこわくて、かなしくて、さみしいから、ぎゃくのことをたくさんかいて、じぶんをはげましていたのかもしれない。

でも、いまとなってはほんとうのことはわからない。

じゃあ、  ぼくもノートをかってきてかいてみよう💨

かいているうちに、ぼくは、
『しんじゃった あとのことを かんがえようとすると いま いきているうちに やりたいことが いっぱい あることに きがついた』

そうなんです!
「どう死ぬか」を考えることは、「どう生きるか」を考えることなんです。
そのことを、シンスケ流に優しく教えてくれている絵本です。
(2016年4月22日発行)

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⑰ヨシタケシンスケ 文・絵/『ころべばいいのに』/ブロンズ新社

誰しも「嫌いな人」の一人や二人はいるかもしれない。

でもって、「けつまずいて、ころべばいいのに」な〜んて思ってしまったりしちゃっているかもしれない^^;

嫌いな人のことを思う時の気持ちって、「とつぜんのどしゃぶり」みたいなもの。。。だって、じぶんではどうしようもないから・・・

嫌いな人やイヤなことは突然やってくる。

だから「はげましセット」を準備しておいて、
いつでも出動して、自分を励ませるように
しておかなくっちゃ!!

 

楽しいことも、いっぱい準備しておかなきゃ!!

それにしても、イヤな気分とか、かなしい気持ちってどこにくっついているのかしら?
からだの外なのかしら?
だとしたら、動いたりしているうちに、少しずつ取れていくのかな?
「ま、全部取れなくてもいっか〜」って思ってみるのもいいのかも・・・

 ま、前が見えないわけでもないしね・・・

これこれ!「イヤな気分」の正体(・o・)

好物は、「かなしみわたあめ」に「ためいきホットドッグ」「いかりやきそば」に「にくしみソーダ」
ひとのイヤなことが大好物。

だとしたら、ゆるせない(●`ε´●)

こんなヤツをよろこばせるなんて、悔しい〜〜

だから、ヤツにバッタリ出会ってしまった時のために、その時にヤツとちゃんと向き合うために、そのエネルギーを自分の中に蓄えておかなくっちゃ!!

イヤな場所から逃げることも大事。
自分を労ることもとっても大事。

 

自分で決めて、ちゃんとできるようになろうっと。。。

嫌いな人、イヤな気分が突然やってきた時、どのようにしてやり過ごせばいいのか、をちょこっと教えてくれる、ヨシタケシンスケ流の「こころの処方箋」。
嫌いな人いたっていいよねーっ、て思えてくるから不思議です(*^^*)
(2019年6月25日発行)

 

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⑯大西進 文/平澤まりこ 絵/『ABOUT TEA 紅茶の絵本』
/サンクチュアリ出版

今回はちょっと趣向の異なる絵本のご紹介です。

おうちカフェで、紅茶をフーフーいいながら飲んでみる

紅茶をいれるのは、むずかしいことじゃない。おいしい紅茶をいれる魔法はすぐ手にいれられる。

紅茶って、なんだろう?


どんな種類があるのかな?

紅茶をいれてみよう!!   
ティーバックでも、茶葉からでも、ポットひとつあれば大丈夫(*^^*)

紅茶は自由に楽しもう!! 
お菓子との相性もいいし、ホットでもアイスでも!
ミルクティーも魅力的(*˘︶˘*).。.:*♡
ベルガモットで香り付けしたアールグレイは、
フレーバーティーと呼ばれ、
その他にも、ハーブや果実、花や香料で香り付けされた魅力的な紅茶もいっぱいあります❤
おうちカフェで、ほっこりタイム〜〜〜

 あれやらこれやら、楽しいや美味しがいっぱいの

『紅茶の絵本』です(^^)/
(2016年11月23日発行)

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⑮くすのきしげのり 文/石井聖岳 絵/『おこだでませんように』
/小学館

 

ぼくは いつも おこられる
いえでも がっこうでも・・・・・

 

 

きのうも おこられたし
きょうも おこられてる
きっとあしたも おこられるやろ・・・・

 

 

ぼくは どないしたら おこられへんのやろ。
ぼくは どないしたら ほめてもらえるのやろ。
ぼくは・・・・・「わるいこ」なんやろか・・・・。

たなばたのひ いちばんの おねがいを かいた。
ひらがな ひとつずつ、こころを こめて かいた。

せんせいは じっと たんざくを みた。
せんせいは、ずっと ぼくの おねがいを みていた。
そして・・・

短冊に込められたぼくの願いが、先生やお母さんに届くといいのにな・・・

いつも怒られてばかりのぼくだけど、そこにはいろんな思いがあったのです。
怒られても、言い返さない理由があったのです。
そう思うと、目に涙を浮かべ、悔しさをグッとこらえる横顔が、なんだか愛おしく思えてくるから不思議です。

お母さんや先生や友だちに言うのではなく、七夕様のお願いの短冊に、一文字一文字けんめいに書いた「おこだでませんように」。このお話の「ぼく」にとって、それは、まさに天に向けての祈りの言葉なのです。子どもたち一人一人に、その時々で揺れ動く心があります。そして、どの子の心の中にも、祈りのような思いがあるのです。私は、そんな子どもたちの心の動きや祈りのような思いに気づくことができる大人でありたいと思います。<あとがきより>

そして、子どもたちだけでなく、私たち大人にだって、誰かに気持ちをわかってもらいたい時があると思います。心の機微に触れることのできる感性を磨いていくことは、どなたかの気持ちに寄り添わせていただくことへ繋がる道だと思っています。
(2008年7月2日発行)

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⑭湯本香樹実著/『夏の庭 -The Friends−』/新潮社
(絵本ではなく小説です)

ぼくら(木山、河辺、山下)は、小学6年生の仲良し3人組。山下のおばあちゃんの死をきっかけに、「人が死ぬ」ということに興味を抱き始める。そこで、近所の「今にも死にそうなおじいさん」の観察を始めることになる。ぼくらに観察されていることに気づいたおじいさんは、「死にそう」どころか、なぜかどんどん元気になっていく。いつしか「観察」は「交流」へと姿を変え、やがて、様々な関わりの中でこころとこころがふれあい、次第に友情が芽生えていく。

夏の終わり。消えゆく命と、そして決して消え失せないもの。それは、常にぼくらの傍らにあって、これからの人生のあちらこちらで道標となってくれるに違いない。

逝くおじいさんと、遺されるぼくたちの、ひと夏の物語。
(1992年5月25日発行)

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⑬林木林 文/岡田千晶 絵/『あかり』/光村教育図書

 

 

1本のろうそくに火が灯されるところから
この物語ははじまります。

 

女の子が生まれた日「こころの中に優しい火が灯りますように」という願いが込められた、お母さん手作りのろうそくに、初めて火が灯されました。

 

嵐の日も凍えるような寒い日も、そして嬉しいことがあった日にも、いつもその灯りは少女に寄り添い、温めつづけてくれました。

 

 

 


いつしか、辛いことや悲しいことがあった日に、少女をなぐさめ、励まし、力づける灯りになっていきました。

そして、少女のこころにあかりを灯すたび、少女が歳を重ねるたび、
ろうそくは少しずつ少しずつ形が崩れ、小さく小さくなっていくのでした。

月日は流れ、とうとう最後の火が灯される日がやってきました。

「くらやみを こんなに やさしく てらすことのできる あかりを わたしは ほかに しらないわ。こころの いちばん おくまで そっと とどくのよ」

これを聴いたろうそくが、消えゆく灯りの中で少女に返した言葉とは・・・

誰かが誰かを見守っている、誰かは誰かのために存在する。たとえ、それが、どんなちっぽけな存在であったとしても・・・
そんな優しく温かい気持ちになれる、まるでこころの中に、こがねいろのろうそくのあかりがぽっと灯されたかのような、そんなそっと語りかけてくれるような物語りです。
(2014年12月1日発行)

 

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⑫いとうひろし 文・絵/『だいじょうぶ だいじょうぶ』/講談社

 

 

「ぼく」がまだ小さかった頃、毎日おじいちゃんと散歩を楽しんでいました。

 

 

 

 

その散歩は、新しい発見や楽しい出会いに満ちていました。

 それと同時に、怖い事や不安な事もありました。

そんな時、おじいちゃんは「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と言って、「ぼく」を助けてくれました。

こうして「ぼく」は大きくなりました。
大きくなった「ぼく」が、この魔法のことばを語りかけるのは、誰なのでしょうか?

そして、あなたは?
(1995年10月20日発行)

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⑪くすのきしげのり 文/森谷明子 絵/『メロディ』/ヤマハミュージックメディア

わたしは「メロディ」。わたしは せかいで いちだいだけの
なまえのある ピアノ。

(だれが ひいてくれるのかしら)

ピアノは、くる日もくる日も、どんな指が自分の鍵盤に触れてくれるのか楽しみに待っていました。


ある日、ふたがあけられ、小さな指がそっと鍵盤に触れました。ピアノはこころがふるえました。
それからピアノは、小さな指がおさえる鍵盤の音をひとつひとつ、こころをこめて響かせました。

女の子の誕生日に、そのピアノはやってきました。
女の子は、ピアノに「メロディ」という名前をつけました。
嬉しい時も悲しい時も、女の子はいつもメロディを弾きました。

でも女の子が中学生、高校生と大きくなるにつれ、だんだんメロディと女の子が過ごす時間は少なくなっていきました。

 何年も何年も経ったある日、メロディは知らない家に連れて行かれました。何が起こったのでしょう・・・

しばらくすると、メロディのふたが開けられ、小さな指がそっと鍵盤に触れました。

その夜、メロディは懐かしい指で、たくさんの曲を弾いてもらいました。

ピアノは弾いてくれる人がいて初めて美しいメロディを奏でることができます。そして、ピアノと弾き手の間には、様々な物語が綴られていきます。

やがてその物語は、母から娘へと引き継がれていくのでしょう♫

同じ時間を過ごした、さまざまな「モノたち」との思い出が、優しい風が吹くように、胸をフッと過るような物語です。
(2012年3月10日発行)

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⑩谷川俊太郎・詩/川端章三・写真/『子どもたちの遺言』/佼成出版社
(絵本ではなく、写真&詩です…)

大人の言葉がもっぱら頭脳から発せられるのに対して、子どものことばは体全体から、そして心の表面からではなくその底の方から発せられる
ー作者あとがきよりー

日常どこにでもありそうな子どもたちの一瞬を捉えた写真と、それに添えられた詩。
それらを通して、それぞれの年代の子どもたちの心の声が聞こえてくるようです。

絵本とは一味違った一冊、いかがですか?
(2009年1月30日発行)

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⑨トーン・テレヘン作/長山さき訳/『ハリネズミの願い』/新潮社
(絵本ではなく、物語です…)

ある日、自分のハリが大嫌いで、ほかの動物たちとうまくつきあえない、孤独で自分に自信のない「ハリネズミ」が、誰かを家に招待しようと思いたち、手紙を書きました。

親愛なるどうぶつたちへ

ぼくの家にあそびに来るよう、キミたちみんなを招待します。
・・・でも、だれも来なくてもだいじょうぶです。

でも、この招待状を送る勇気がありません。

もしも〇〇が訪ねてきたら・・・と想像するだけで、不安に襲われてしまうのです。
もしも、誰も訪ねてきてくれなかったら・・・と想像するだけで、悲しくなってきてしまうのです。

 せっかく来てくれたのに、お菓子が足りない(^.^;

机も椅子もへし折られちゃう(≧▽≦) 

 難しいこと聞かれてもな・・・

いつ辿り着くことやら(~_~;)

 歌を聴くと、涙が出ちゃうんだ(¯―¯٥)

オソロシイ訪問が頭の中で繰り広げられ、考えれば考えるほど、招待状が出せなくなってきてしまいました………

 

でも・・・

初めて、時間が止まればいいのに!って思ったんだ。やっと、やっと・・・
「とっても楽しかったね、ハリネズミ。また、会おうね!

 

 

そして、安心して冬眠に入りました💤 

断られるのが恐くて、誰かを誘えないことってありますよね。
せっかく来てもらっても、ちゃんとおもてなしができるかどうか不安なことだってありますよね。
いろんなことが頭の中で繰り広げられても、でも、やっぱりともだちが欲しいなって思っている「臆病で気むずかしいあなたのための物語」です。
(2016年6月30日発行)

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⑧バージニア・リー・バートン 文・絵/いしいももこ 訳/
 『ちいさいおうち』/岩波書店
       

 

むかし、いなかの静かなところに、
ちいさなおうちがありました。

 

 

 

春になると野原はみどりにかわり、りんごの花がいっせいに咲き始めました。
夏にはいっぱい実がなりました。

 

 

秋になると木の葉は黄色や赤にそまり、りんご摘みが始まりました。

 

ところがある日、ちいさいおうちの前を自動車やトラックが行ったり来たりするようになり、あっという間に、家やアパート、電車に囲まれてしまいました。
ちいさいおうちは、まちはいやだと思いました。

ちいさいおうちは、これからどうなってしまうのでしょうか…

私たちの身の回りには、便利で華やかで魅力的なものが溢れています。
でも、自分にとって本当に大切なものって何なのでしょうか…?
(1965年12月16日発行)

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⑦シルヴァスタイン作/倉橋由美子訳/『ぼくをさがしに』/講談社

 

 

 

何かが足りない
それでぼくは楽しくない
足りないかけらを探しに行く
これが「ぼく」のかけら探しの旅の始まり

野を越え、山越え、海越えて、いろいろなものに出会いながら
かけらを探す

 大きすぎたり

小さすぎたり……  

「ぼく」は自分のかけらを見つけることができるのでしょうか…?

何かが足りない、何かを変えたい、と思った時
「ぼく」と一緒に旅をしてみませんか?
(1997年4月24日発行)

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⑥菊田まりこ 文・絵/『いつでも会える』/学研

 主人公のシロですU^ェ^U

シロはみきちゃんのことが大好き♡ 
何をするのもみきちゃんと一緒でした。

 

でも、ある日突然、みきちゃんが・・・

 

探しても探しても見つからないみきちゃん。 
シロはどうしていいのか、わからなくなってしまいました。

 

深い悲しみの中、シロはみきちゃんとの楽しかった日々のことを考え始めました。
すると・・・

大切な人やものとの別れ。私達はそれをどう受けとめ、折り合いをつけていけばよいのでしょうか。。。
そのヒントをなげかけてくれる1冊です。
(1998年11月発行)

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⑤スーザン・バーレイ 文・絵/『わすれられないおくりもの』
                        /評論社

森のなかまの誰からも慕われていたアナグマは、ずいぶん歳をとってしまい、自分が死ぬのが、そう遠くはないことを知っていました。
でも、死んでからだがなくなっても、こころが残ることをアナグマは知っていたので、死ぬことは怖くありませんでした。ただ気がかりなのは、残していく友だちが悲しむことでした。

 とうとうある日、アナグマは、
長いトンネルの むこうに行くよ さようなら アナグマ
と手紙を残して、死んでしまいました。

モグラはベッドの中で、毎晩アナグマのことばかりを考て、毛布が涙でグッショリになってしまいました。

 

 でも大丈夫!!
あるあたたかい春の日に、モグラは、アナグマが残してくれた、たくさんのおくりもののお礼を言いに、丘に登りました。
ありがとう、アナグマさん。

かけがいのない友だちを失った森のみんなは、どう悲しみを受け容れていったのでしょうか・・・

たくさんの大切なものを、この物語は私たちに語りかけてくれています。どう受けとめるか?は自分のこころ次第です。
(1986年10月10日発行)

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④湯本香樹実 文/酒井駒子 絵/『くまとやまねこ』/河出書房新社

 ある朝、くまの大の仲良しのことりが・・

 くまは、きれいな箱に、いい匂いのする
お花と一緒にことりを入れてあげました。

 どこに行くのも、その箱と一緒。
森のお友達に見せてあげると、みんな困った顔をして言います。
「つらいだろうけど、わすれなくちゃ」

 くまは悲しくなって、部屋にとじこもってしまいました。

 でもある日、気がついたのです!
外はとってもお天気がいいことに!!
くまがことりの箱を持って歩きだすと・・・
見慣れないやまねこと出会いました。

 くまは箱のふたを開けて、やまねこにことりを見せてあげました。
すると、やまねこはことりをじっとみつめてから、とっても素敵な言葉をかけてくれたのです。

 そして、くまとことりのために、ヴァイオリンを弾いてくれました。


くまはそっと目を閉じました。浮かんでくるのはこんな風景✨
やっぱり、音楽の力ってすごいです(*˘︶˘*).。.:*♡


そして、その箱を手放す決心をしたのです。だって・・・


やまねこと一緒に、こんな素敵なお墓をつくりました。


楽器の弾けないくまに、やまねこはタンバリンを手渡しました。

 そして、一緒に旅に出たのでした。

これは、大学院の授業で先生が紹介してくださった絵本です。
大切な人のことを、忘れたりしなくたっていいんだよ。
目には見えなくたって、いつも一緒なんだよ。
それを教えてくれたのは・・・

やまねこの奏でる優しいヴァイオリンの調べが、まるで聴こえてくるかのような物語です。白黒だった世界に、可愛いピンクの花が咲きました。
(2008年4月30日発行)

次回からは、第1、第3週末、の月2回のご紹介とさせていただきます(^_^)/

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③マイケル・ローゼン作/『悲しい本』谷川俊太郎訳/あかね書房

扉を開くと、目に飛び込んできたのは・・・

「誰にも、
なにもはなしたくないときもある。
誰にも。
どんなひとにも。
誰一人。

・・・・・・私の悲しみだから。
ほかの誰のものでもないのだから。」

という一節。
誰のものでもない、私だけの悲しみが描かれた本です。


「悲しみがとても大きいときがある。どこもかしこも悲しい。からだじゅうが、悲しい。…息子のエディーのことを考えるときがいちばん悲しい。エディーは死んだ。
私は彼を愛していた。とてもとても深く。でも、彼は死んでしまった。」

この本には、愛する息子を亡くしてしまった一人の男の独白が綴られています。その男は、様々なやり方で自分にまとわりつく悲しみを紛らわそうとしますが、どんなに逃れようとしても、気がつくとまた、悲しみの渦に引き込まれているのでした。

絶望の底に沈んだ男を、悲しみから解放するのは、幸せの中にあった頃の記憶。
そして誕生日を祝うロウソクの火……。

悲しみの記憶から逃げずにとことん向き合うことで、いのちへの愛おしさという大切なことに気づくことができるのかもしれません。

本当に、深い悲しみが、厳しいほどにストレートに伝わってくる絵本です。
でも、何度も何度も読み返すうちに、ろうそくの灯が男のこころをぽっと温かく照らし始めるのを感じることができます。
また、谷川俊太郎の訳が、淡々と、そしてやがて、じんわりとこころに染み渡ってくるのが心地よく感じられました。
(2004年12月)
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②シェル・シルヴァスタイン作/『おおきな木』村上春樹訳/あすなろ書房

      
一本のりんごの木と少年が出会いました。
毎日一緒に遊び、それで木はしあわせでした。


少年は成長し、木はひとりぼっちの日が多くなりました。

    
時々訪れる、成長した少年の望みを、木は叶えてあげました。
それで木はしあわせでした。

  
ある日、年老いた少年が訪ねてきました。
もう何も欲しいものはない、、、と、古株に腰掛ける少年。

 それで木はしあわせでした。

幼い男の子が成長し、老人になるまで、温かく見守り続ける1本の木。
木は、りんご、枝、そして幹・・・と、少年の希望を叶えるために、自分の全てを彼に与えてしまいます。
それでも木は幸せでした。
1964年にアメリカで出版され、それ以来30以上の言語に翻訳され、世界各地で人々の手に取られてきたロングセラーです。
前翻訳者の本田綿一郎さんが亡くなったため、2010年に村上春樹氏訳で改めて発行されました。(2010年9月2日発行)

あとがきに、翻訳した村上春樹氏の想いがあふれています。
「あなたはこの木に似ているかもしれません。
あなたはこの少年に似ているかもしれません。
それともひょっとして、両方に似ているかもしれません。
あなたは木であり、また少年であるかもしれません。
あなたがこの物語の中に何を感じるかは、もちろんあなたの自由です。
それをあえて言葉にする必要もありません。
そのために物語というものがあるのです。
物語は人の心を映す自然の鏡のようなものなのです。」
(村上春樹/訳者あとがきより)
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本日から、ここ「絵本の花束」で、週に1冊ずつ絵本をご紹介していきたいと思います(^_^)/

司書をしていた友人から、「デュラックって知ってる?」と、たくさんの素敵な挿絵が送られてきました。
 シェークスピアの『テンペスト』
エドマンド・デュラックの挿絵が、初めて日本に紹介されたのが、この絵本でした。

彼は1882年10月22日、フランスのトゥールーズに生まれ、19~20世紀初頭のイギリスの挿し絵黄金期を支えました。
画面構成には、浮世絵からの影響も見られ、繊細な淡いタッチが全体を幻想的、神秘的に演出し、描かれた表情からは、なんとも儚げな印象を受けます。

 『人魚姫』

  『アラビアンナイト』

 『シンデレラ』

他にも、美女と野獣や雪の女王、眠れる森の美女、アンデルセン童話集、ギリシァ神話物語なども手がけています。

これがデュラックの挿絵だとは知らなくとも、みなさんもどこかで目にされたことがあるのではないでしょうか。だからでしょうか・・・なぜか、どことなく懐かしい感じがします(^^)

ここまでにご紹介した絵本は、みなさんもよくご存知だと思いますので、初回の今日は、先日の発表会で好評だったものをご紹介したいと思います。

①ガブリエル・バンサン作/『アンジュール ある犬の物語』/BL出版

            
ある日、犬は疾走する車の窓から投げ捨てられた。
追いかけても、追いかけても、その車は停まることはなかった。

            

            
突然野良犬になってしまった犬は、彷徨い、うなだれ、空に吠える。

    
やがて歩き疲れ、佇む犬の目線の遠く先に、同じくひとりぼっちで佇む少年の姿が映る。
走りより、少年の胸に顔を埋める犬。その目には、きっと優しい少年の瞳が映っていることだろう。

文字のない、ただ、線と点が鉛筆で書かれただけの絵本。物語は、読み手がそれぞれの思いで紡いでいく。しかし、最後の1枚で、きっと誰の胸も温もりに包まれるに違いない。(1986年5月1日発行)